あるヴァイオリン関係者の方に、「毛替えといっても、システィーナ大聖堂の天井絵を描くほど難しくはないだろう」と言われたことがありました。色々な弓(ヴァイオリンからコントラバスまで、分数サイズ、バロック、歴史的に特に価値の高い弓等)の毛替えしてみた結果、その問いに対する私の答えは、「果たしてそうか…?」というものです。
そもそも弓の毛替えとは、どういうものでしょうか?
毛替えの手順そのものはシンプルな一連の動作にすぎません。
ただし、扱う弓が変われば、その作業にもヴァリエーションが必要となります。弓は一本たりとも同じものはありません。特に、弓の性格、機能性は材質によって決まるため、それぞれに違います。
したがって、「毛替えをする」ということは、「その弓を理解する」ということになります。一本一本の弓に、それぞれ理想の毛替えがあります。
また、道具には、それを操る人がいます。弓は、その「主人」から切り離せない物です。一人一人の演奏家には、それぞれ弾き方のスタイルがあり、それはその人の楽器と弓にしっかり刻み込まれているものです。それ故に、多くの演奏家には、毛の張り具合や毛の質に対してその人なりの好みがあります。ですから、私は毎回、「どういう風にしたいですか?」と質問します。
3つ目の要素として、気候の問題があります。日本には、地理的な湿度の変化(例えば、北海道と九州)と、季節の上での湿度の変化(言うまでもなく、冬の乾燥と夏の湿気)という、職人が無視することの出来ないファクターがあります(フランスでは、ほとんど気にしなくて良い問題なのですが…!)
より良い毛替えを追求した結果、毛替えに二種類のヴァージョンを設けることにしました。
弓の毛は、モンゴル製の最高級のものを使用し、毛並みを揃えるために注意深く選別します。その都度、弓の状態に細心の注意を払って行われます。
基本的に、ご予約頂いたその日のうちに仕上がります。また、前回もアトリエ・フランセで毛替えをした弓の場合、一時間で仕上げることが可能です。
価格 |
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ヴァイオリン / ヴィオラ: 8,800 円 |
チェロ: 9,900 円 |
コントラバス: 11,000 円 |
※音大・音高生や小さなサイズの弓は、1,100 円値引き致します。
更に上のクラスを求めたい音楽家には、La Mèche Artiste(アーティスト・クラス)をお勧めします。毛替えの作業やテクニック自体は、ヴィルトゥオーゾ・クラスと変わりませんが、毛の選別は更に選りすぐったものとなります。最高の状態の毛のみを使用したアーティスト・クラスの毛替えは、音質に最上の透明感をもたらしてくれるでしょう。
ご予約時に「アーティスト・クラスを」とご用命下さい。
仕上がりには24時間かかります。ご希望のお客様には、弓の金属部分の磨きと、弓のスティックにフレンチポリッシュを施します。これらはアーティスト・クラスの毛替えをご用命のお客様へのサービスとして行いますが、作業時間が増える為、24時間以上かかる場合もありますことを、ご了承下さい。
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